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シュール

森と少年

暗く湿った森の中。

無数の呼吸音。

不特定多数から放たれるノイズによって

少年のアイデンティティーが消失する。

理論武装が解除され

小鳥のような心臓がむき出しになる。

どんなに冷静を装っても

おしゃべりな心臓は全てを語ってしまう。

メタモルファーゼ

喜び方を忘れた。

怒り方を忘れた。

哀しみ方を忘れた。

楽しみ方を忘れた。

 

ただフリをするだけ。

それが最も効率がよい。

 

手帳を開いて

終わった仕事にチェックを入れる。

それが目的。

 

仕事が終わると報酬をもらう。

 

より見ばえのよいスーツと

鬼さん

とうもろこし畑の真ん中で

僕らは鬼ごっこをしていました。

 

鬼さんこちら

手のなる方へ。

 

雲一つない空の下

こわいものは鬼さんだけでした。

 

僕は転んでしまい

鬼さんに捕まってしまいました。

残念。

今度は僕が鬼さんです。

 

すぐに捕まえてやる。

とある水難事故

白い紙         。ここに      。溺        
  に         た   存     た れ       
  自由に       っ   在     っ  る      
    文章を     ま   す     な   。     

白けゆく部屋

鏡に映った水密。

むせかえるような甘い香り。

砂嵐のテレビジョン。

宇宙からの交信。

明滅する部屋の中で

蠢く二匹の宇宙人。

 
互いに誰なのかもわからない。

自分が誰なのかもわからない。

だから身体で確かめ合う。

 
天井の赤いトカゲが

部分と全体

僕は生きているけど死んでいる。

全体としては生きているけど

部分的には死んでいたりもする。

絶妙な均衡のもとで僕は成立している。

 

僕は世界。

60兆の命が宿った世界。

生まれてくる細胞。

死んでいく細胞。

増えすぎないように

減りすぎないように

魚は水草にしがみつきながら

ゆっくりと呼吸をしていた。

いつの間にここは

こんなにも息苦しくなってしまったのだろう。

 

金魚鉢の中からガラス越しに見る世界。

ひどく歪んでいて

全てが他人事のように思えた。

 

ねえ?

この物語の主人公は誰?

 

ネズミさん

僕の上を鉄の塊が通り過ぎていった。

これで5回目だ。

僕はもはや原形をとどめていない。

かろうじて残った細長い尻尾によって

僕はネズミとしてのアイデンティティーを保っている。

迫り来る轟音。

あと少しで僕は消滅する。
 

3…

2…

1…
 

その瞬間
 

IN YOU

君の瞳を覗いていると

重力が反転してしまった。

僕は空に吸い込まれていく。

深い紺碧の中に溶けていく。

僕は小さな点になる。

僕は自分の座標を見失う。

こうなったらどこまでも飛んでやる。

こうなったらどこまでも堕ちてやる。

君の海の中で

僕は泳ぎ回る。

シベリアン・ドリーム

草原に吹く風のように

寝息の輪唱が聞こえる。

明け方に目覚めてしまった私は

一人窓の外を眺めていた。

窓にはたくさんの霜が降りていた。

空に浮いた鉄の塊。

私はその中にいた。

眼下に広がっていたのは

凍てついた大地シベリア。

終末

クレーターだらけの僕の町に

箱舟がやってきたんだ。

木製の立派な箱舟だった。

とても大きな箱舟だった。

ごうんごうん。

ごうんごうん。

窓から色んな友達がのぞいていたんだ。

図鑑で見たことがあるやつもいた。

なぜだか、みんな怒った顔をしていた。

渋谷駅前交差点

渋谷駅前交差点。

人々の目に灯った赤い炎。

高まる闘志。

戦闘開始まであと3秒。
 

3。

2。

1。
 

酸素を十分に吸収することで

赤い炎は

超高温の青い炎へと変化する。
 

時は熟した。
 

全軍突撃。
 

ハチ公の遠吠えと共に

渋谷が怒号に包まれる。 

カーニバルの夜

ブラジルのホテル。

熱帯夜。

今日はリオのカーニバル。
 

それなのに僕ときたら

屋上で一人、星を眺めている。

ひらりひらり。

青い蝶が飛んできた。

お嬢さん、こんな時間にお散歩かい?

蝶は淋しそうに微笑んで、力なくはばたいた。

ブラジルで蝶がはばたくと

神の子供

私たちは神の子供。

絶望の淵に立たされたとき

手を合わせて神に語りかける。

手を合わせると小さな輪ができ、

冷たい手に自分の温もりを感じる。

ああ、私は生きている。

神様、救けてください。

まぶたに浮かぶ神の面影。

イエス・キリスト。

お釈迦様。

もしくは

森のクマさん

ある日 森の中

クマさんに出会った

 

クマさんの一撃で

男の耳が吹き飛んだ。

近づいてくるクマさん。

男は死を覚悟した。

この世で人間が一番強いものだと思っていた。

人間社会の中で安全に暮らしていたがゆえに生まれた慢心。

野生の中では人間は脆弱な生き物だ。

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