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祈り

作り話

 
 
傘のない世界で
きみに傘の話をしている
小さなバス停に並ぶ他の人たちも
そぼ降る雨に濡れて
皆寒そうにしている

ぼくは傘の話をする
その機能を
その形状を
その色や柄の種類を
まるで見たことがあるかのように

夢みたい、と言って
そんな夢みたいな作り話を

指がちくわに刺さってしまった

 
 
右手の人差し指がちくわの穴に刺さって
抜けなくなってしまった
ちくわはとても嫌いなので
食べるわけにもいかない
そのままデートに出かけたけれど
あいにく恋人もちくわが大嫌いなので
食べてもらうわけにもいかず
恋人は始終不機嫌そうにしていて

ラブレター

 
 
ぼくが遺書を書く
きみがそれを紙飛行機にして飛ばす

そこかしこに光は降り注ぎ
そこかしこに影をつくっている

紙飛行機が草原に不時着する
文字の無い白い翼のところを
蟻が一匹歩いている
 
 
 

もっと簡単に愛を

 
もっと簡単にあなたを愛したい
複雑な手続きなど経ることなく
もっと簡単に
もっと簡略に

僕は僕の皮膚を越えて
外に出て行くことはできない
僕から出て行くのは言葉
それは様々な作業工程の中で作られ
僕の原形はわずかしかない
僕から出て行くのは精子
でもそれはきっと

蒸発

 
 
光が蒸発していく駅舎
待合室の隅のほうで
一匹のエンマコオロギが
行き場をなくしている

他に行くところのない子供たち
髪にきれいに飾られた赤いリボン
鼻から伸びているチューブ
幸せ、不幸せを感じられるうちは
人はまだ幸せなのかもしれない

こんにゃく(について)

 
 
キッチンで君と二人
こんにゃくをちぎっていく
娘は一人、二階で
静かに宿題をしている
こうして手でちぎると味がよく染みこむのよ
君が母親から教えてもらったように
僕は君から教えてもらっている

こんにゃくの中心を目指して
ひたすらちぎっていく
その度に中心は移動し

こんにゃく

 
 
このこんにゃくを探しています
家族同様に可愛がってました
見かけた方はご連絡ください

という貼紙が電柱にあった
家にあるこんにゃくに良く似ていたので
書かれていた住所のところまで持って行った

玄関に女の人が出てきて
残念ですが違います、と言った

こんにゃく

こんにゃくの降る街を
君と歩く
手をつなぐのは
二人に手があるから
理由はそれだけでよかった

子どもたちが積もったこんにゃくで
だるまを作ろうとしている
それは無理なことだ、と
大人は教えようとするけれど
彼らはまだ
不可能という意味を知らない

やがてその意味を知り

こんにゃく

 
 
どこかの外れのような野原に
ひっそりとメリーゴーランドはあった
白い馬にまたがると
むかし死んだ友だちが背中を押してくれる
メリーゴーランドがきれいな音楽とともに
ゆっくりと回りだす
友だちは遠くで手を振っている
その笑顔が懐かしくて

こんにゃく

 
 
手紙を出す用事があって
エレベーターを待ってる
扉が開く
エレベーターの中が
こんにゃくでいっぱいだったので
乗らずにに見送る
あんなに沢山のこんにゃくを積んで
あのエレベーターはどこまで行くのだろう
もう二度と来ない気がして
階段で行くことにする

こんにゃく

 
 
こんにゃくを買いに出かける
いつものスーパーでは売り切れだった
少し遠くのスーパーでは見つからなかった
少し遠くの別のお店では
こんにゃく以外のものならあるのですが
と残念がられた
昨日まではあんなに並んでありふれていたのに

こんにゃく

 
 
テーブルの上に
こんにゃくがある

窓の外では
桜の花びらが少しずつ
風に散っている

白い磁器の皿にのせられたまま
誰に忘れられたのか
いつまで忘れられるのか
蒸発した水分の量だけ
その身を軽くしながら

敷地内の停留所
こんにゃくにも忘れられた
夜勤明けの僕が

旅先

 
 
砂時計の砂が落ちていく
のをあなたは見つめている
すべての砂が落ちてしまうと
黙って逆さまにする

一日がその果てしない繰り返し
あなたにとって時間の単位とは
どこまでも続く砂漠だった

そしてそれはまた
二度と帰ることのない
遠い旅路に違いなかった
 

指紋

 
 
舌の根が乾かぬうちに、駅
年を取った男の人が
魚の燻製や塩漬けのようなものを
車の荷台に積んでいる
濁った金属製の手すり
この街で指紋のいくつかは
言葉と同じ程度の意味を持つ
つまりそれは
言葉と同じ程度の意味しか持てない
コンコース、行き来する柔らかい

ノイズ

 
 
泡の中に階段
階段の突き当たりに崖
飛び込んでごらん、ウールだよ
と言って
飛び込んでいく民兵たち
砕け散ったポケットの中に
鉄屑
こぼれ落ちた鉄屑の雫で
埋め尽くされた野原
野原にたたずみ
花になりたいとひたすら願う少年
少年の目の中を泳ぐ金魚
そして安らかに

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