魚は水草にしがみつきながら
ゆっくりと呼吸をしていた。
いつの間にここは
こんなにも息苦しくなってしまったのだろう。
金魚鉢の中からガラス越しに見る世界。
ひどく歪んでいて
全てが他人事のように思えた。
ねえ?
この物語の主人公は誰?
神様が綴る壮大な物語の中では
魚はエキストラにもなれないのかもしれない。
果たして自分に存在価値はあるのだろうか。
魚はふと思った。
そもそも価値を考えることに価値はあるのだろうか。
存在価値を決める権利など誰ももってやしない。
例え、どんなに否定されても
自分が肯定してやればいい。
肯定するのに恥じない生き方をしていればいい。
「がむしゃらに生きてやる。」
鋭い音とともに
金魚鉢にひびが入った。
ほら、ごらん。
本物の世界を見せてあげるよ。
輝くフィラメント。
降り注ぐ光の雨。
魚は水草を離れ
水面へとかけ上る。
光を浴びろ。
呼吸をしろ。
醜くてもいい。
愚かでもいい。
生きた証を見せるんだ。
魚は懸命に口をパクパクさせた。
心臓の音が聞こえた。
世界の匂いがした。
金魚鉢の中から水面越しに見る世界。
はるか上空に天井画が見えた。
神様が微笑んでいた。
魚は少し真理に近づいたような気がした。








