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……とある蛙のノート

イザナミ

迦具土神(カグツチ)産みて病重く
この世を去ったイザナミは
出雲と伯耆の間 比婆の山に葬られ

黄泉の比良坂イザナギが
あきらめきれずに
逢い求め

拒絶されてつのる思い
灯りをともして見る過ち
「うじ たかれ ころろきて」
書紀には 膿が流れ、蛆がわく。

交差点

2

水蛭子

成り成りして成り合わないところと
成り成りして成り余っているところを
刺しふさぎて

行きめぐりの御柱
妹よりさきに
褒めそやし

美しき言葉
ミトノマグハヒ

近親相姦
ヒルコにアハシマを産みながら

あし(き)船にのせられて
流し捨てられた祖霊は

雨の中の小さな詩(うた)

雨の交差点で
大通りをはさんで
楽しげな親子二組

一組は老婆とおばさん 一つ傘の下
まるで恋人のように腕を組んで
老婆の顔をのぞき込み、ニコニコしながら
信号が変わるのを待っている。

一組は乳母車を押しているヤンママ
ケバイ化粧にミニスカート 黄色の長靴、傘さして

赤い月

1

筆を持つ腕の無い僕は
口で絵筆をくわえ
カンバスに向かって
朱色を引いた

引いた朱色赤は次第に濃くなり
カンバスの中央で丸くなった
カンバスの下には申し訳無さそうな
地平線があり
空を無理やり作ろうとしていた。

僕は口でくわえた絵筆で

車椅子

夕暮れの通りで
僕は見る。
長い影を引き摺った
車椅子に乗った老人を

中折れ帽をかぶって
ブルゾンを着込んだ老人は
車椅子に毅然と座ったまま
一点を見つめている。

横顔には深く刻まれた皺
しかし、柔和ではないが、怒ってもいない。
彼には表情がないのだ。

エレジー

古いレンガ倉庫街
流れる夕暮れのエレジーは
昔の俺の子守歌
それで育った荒くれは
港港に婦女をこさえ
口笛吹いては消えて行く

中には船が難破して
帰って来られぬ者もいる
それでも片輪で帰った者は
酒場で一人飲んだくれ
 昔語りのろくでなし
酒場でだれも相手せず、

底の町

5歳の僕は風の中にいた。
底の町から吹く風は暖かかったが、
上の町から吹く風は冷たかった。

底の町から吹く風を顔面に受け止めて
膨らんでゆくと
僕は虫になって舞い上がった。

谷の反対側のお屋敷町を
ゆっくり飛んで眺めながら、
小盗人の僕は
柿の木、栗の木、枇杷の木と

生活の孔

隠してあった断裂や亀裂が
突然、あんぐりと口を開け

申し訳無さそうに
僕に向かってくる。

僕はまたか と思いますが
それらに向かって口を引っ張り
縫い合わせようと努力します。

はれはれ安易な継ぎ接ぎ掛け接ぎ(つぎつぎかけつぎ)

マナウス

ー少年はマナウスを夢見ていた
 川の対岸に沈む夕日を
 アマゾンの熱い空気圧を
 しかし、

川の向こうの水平線に
大きな夕日が沈む時
マナウスの熱い夜が始まり、
船が夜の川をゆっくり滑り落ちる。

獣の咆哮
鳥の声
ネットリとした熱帯の空気圧が
少年の眠りを妨げる。

たい焼き

達磨(以前朝から、今昼に開店―殿様商売)

小川町の交差点の角
一列の人達がいる。
甘い匂いに包まれた
おばさん、OL、女学生、若い男少々

そこに入れず交差点の角に
不良座り(うんこ座り)の爺いが二人
たい焼きは旨そうだ。
でも勇気がないのか?
プカプカプカプカ

水たまり

雨上がりの道端に
水たまりがひとつ
水たまりに深みは無く
雨上がりのガッツイた太陽によって
あっと言う間に乾いて無くなる。

しかし、水たまりは消えて無くなるわずかの間
空の青さと空の深みを写すのだ
雨上がりの美しい空を

jim H

その褐色の巨人は
毛髪からエレキを放電し
異様な叫び声を上げたり
心を揺さぶる言葉を呟き

その褐色の巨人は
無骨な太い指で
楽器の喉元を押さえ
楽器の内臓を掻き毟って
悲鳴を上げさせ、楽器の悲鳴に酔いしれ
その悲鳴をマーシャルアンプで増幅させていった。

猫好き

猫無表情

猫したり顔
猫困り顔
猫泣きべそ顔
猫笑い顔
猫怒り顔
猫脅し顔
猫そのまんま

咬む猫
吠える猫
眠る猫

そっぽ向く猫
ふとる猫
何かしたり顔の猫

酔う猫
泣く猫
黙る猫

あくびする猫
騒ぐ猫
媚売り、えさをねだる猫

猫は何でも自己中だ

でもうちの

風船に

「風船」

君は青い風船だ
これから空高く飛ぶのだ
これから目一杯膨らむのだ
パチンと割れたらもうおしまい。
しかし君は空の高さをおもうのだ。
内なる圧力をおもうのだ。

僕は古びたポンプだ
君を際限なく膨らますのだ
君がどこに行こうと勝手だが

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