粉雪の白い手に
そっと口づけをして
柊の紅い実に
ほおを染めて待つよ。
ふわふわの粉雪に
初めてのおめかし。
ノエルの足跡がほら
石畳をあるくよ。
消えないうちにはやく、
はやくたどってきて。
一日おくれのサンタは
石だたみをわたって
粉雪の白い手に
そっと口づけをして
柊の紅い実に
ほおを染めて待つよ。
ふわふわの粉雪に
初めてのおめかし。
ノエルの足跡がほら
石畳をあるくよ。
消えないうちにはやく、
はやくたどってきて。
一日おくれのサンタは
石だたみをわたって
ひとまちの改札へ
はねまわる白い息。
切なくて甘くて
ため息はみんな
同じ色をしてるね。
はやく見つけて。
あとちょっとだけ
気がつかないから
ふわりふりむいて
ふいにつつんでみて。
冬のにおいだね。
そうだねのかわりに
そっとほおよせた。
あといくつの秋を
越えていけるだろう。
もういくつの夏を
過ごしてきたのだろう。
知らなかった春を
知っていく冬を
愛しさの前も後も
きみと呼んでいいの。
時が流れていると
思い込んでいたら
自分が流れていた。
風は自由なのかと
耳を澄ましてみても
こぼれる涙の数だけ
好きだというなら
きっとまだきみは
愛してるんだね。
心は騒いでいるのに。
耳のしびれた受話器で
「もう泣かないで」と
「まだ切らないで」も
聞き分けられないぼく。
つまずく息がみえるよ。
涙のノイズの向こうで
ずっと一緒にいたいよ。
まっすぐなその瞳に
うつりこむこの瞳は
ほんとうに正直かな。
夏のカフェテラスは
ささやくミントのかおり。
傾けたグラスの底で
こおりはきらきらうたう。
もっといい人がいるよ。
でもあとすこしだけ
できるならずっと
いつからだろう
両手いっぱいの幸せを
胸いっぱいすいこむこと
おくせずにはきだすこと
忘れてしまったのは。
この胸をふさぐばかりで
口をあけたままの痛みが
この手にふれる悲しみを
照らす光になるだろうか。
その人の涙がしみて
痛むことのできる
苺のショートのクリームが
ひだりのほっぺについてるよ。
いっしょのケーキをたのんでも
「ひとくちあげる」と笑うから
白いえくぼがいとしくて。
苺のショートのクリームが
ついてるなんて言わないよ。
いつもはきにするきみだから
雨あがりの空は
まだきみのにおい。
夏風はいたずらに
首すじへため息をつくよ。
あの虹をわたれば
切なさをこえられるの?
さんざめく奇跡より
その笑顔にあいたい。
肌のすこしおくに
まだきみのおもさ。
やわらかくなぞるように
白いシャツのくびを
潮風がくすぐって
緑のスパンコールに
きらきら夏のしるし。
サンダルによせる波
その肩にそそぐ日差し
きみへすくった海に
うつりこむ空の青み。
白い貝がらをひろって
ふたり耳をすませば
潮風がほおなでるよ。
あどけない横顔に
時がとまればいい。
叶わないというなら
時をこえて。
寄り添うふたりの影は
星に染まってしまうから
もうみえなくなるね。
どうしてこんなに
いとしい気持ちを知るの
ただ胸にあふれて
きみが滲んでゆくよ。
あとちょっとだけ
すみ透る空だから
白いリネンのシャツを
一枚だけほしてみよう。
沁みとおるなみだも
白いひかりのなかで
雲になってゆくよ。
さらさらのシャツをはおって
すみとおる胸にはれた
水色のかぜ明日のそら。
さみしいよ。あいたいよ。
ことばにしたら軽すぎて
送信ボタンがおせないよ。
どうしたらいいのかな。
つたえてもいいのかな。
つたえたならきみは
どんなふうに感じるの。
忙しくないよ。
すこしかすれた声だから
ばればれだよ。
わらったふりでそっと
あと五秒でいい。
息がとまるくらい
見つめさせて。
ベンチのふたりの影は
夕日に長くのびるから
あとちょっとしかないね。
どうしてそんなに
いとしい瞳をするの。
星もない空なのに
もうきらきらしてるよ。
あとちょっとだけ
こわれていく。
愛をもとめる人は
ただもとめるだけで。
愛をあたえる人は
誰に与えているのか
考えたこともないんだ。
何杯目かもわすれて
深いコーヒーをいれては
砂糖でごまかせずにいる。
ティースプーンの先が
カップの底を削るたび
どうかとめないで。
あふれる涙に
嘘をつきたくないよ。
慰めたりしないで。
よけいにきみが
いとしくなるよ。
瞳を閉じれば
いつも会えるきみを
瞳のおくだけに
ずっと失う気がして。
受話器の向こう
長いきするよって